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自然と寄り添う生き方を、生活を通して体験する。

そんな取り組みを、放課後デイサービスの方に依頼され、2020年12月〜2022年5月までの約1年半、毎月1週間くらい石垣島に来る10人前後の子ども達に、自然農や体験学習の講師として、「生きる」ために大切なことを伝える活動していました。

学校に行ってないその子たちは、世間からは変わった子と呼ばれていたり、病院からは発達障害とか、ADHDとか病名をつけられて薬を処方されたりしています。でも、子たちを見ていて気づかされることがあります。彼らは病気どころか、とんでもない特技や才能を持っているんです。

 

ここでは「自由に自分の好きなことにチャレンジしてみて、ダメだったら諦めてもいい、そして大好きなことはとことん何時間でもやっていい」と伝えています。

 

 

自分はその子たちに学校では習えない、生きる力、衣・食・住の作り方を教えていたのですが、まだ半年も経っていないのに、どんどん運動神経、記憶力、積極性、動体視力、バランス感覚が上がり、今では、たった5時間で鶏小屋を作り、3時間でこぶたの柵を作り、左官職人よりも速く漆喰を塗り、東南アジアの人のように美しい鍋敷やカゴを編み、料理も化学調味料無しの物を食べているせいか、絶対味覚を持っていたりします。

「帰りたい」と 泣いていた子が
「帰りたくない」と 泣き出す日。

ここに来てすぐは「騙された」と泣いて抗議した子もいました。「遠足だよ」と大人に言われてついて来て、島についた途端「1週間は帰れないよ」と言われるのですから「お母さんに会いたい」とすすり泣く子、環境の違いにとまっどって帰りたがる子、閉じこもる子も出ます。

 

そして、だいたい3日くらい経つと自分から部屋を出てきて、ここでの体験生活、小屋づくりや、家づくり、農作業などにも参加し始めるんです。

 

ここでは、どの大人もべったり甘やかしたりしません。「大人が手伝ってくれたからできたんだ」と子ども達が思わないようにする距離感。「昨日もできたから、明日もまたできる」子ども達が「自分たちでできた」と思える自信に繋がっていく。

 

大人は子ども達がそう思えるように、ただそばでサポートをするだけです。 だけど、放ったらかしもダメで、これがなかなか難しい。大前提として自由は絶対に奪ってはいけない。

 

例えば「今日は家をつくります」となった時に、家を作りたい子は急いで集まってきて、勝手に家づくりを始める。こういう場所に来ると大人は子どもたちに是非とも参加させたい。だからつい「ゲームやめろ~」「今からやるぞ~」って言っちゃいがち。でも、子どもたちの心が動いていないのなら、それで参加してもダメだと思う。だから何も言わない。だけど、家を作っているみんなが楽しそうだと、ゲームやってた子が、ゲームを置いて勝手に混ざってくる。自分にとってはそっちの方が大事なんです。

 

そうして過ごしている内に、今度は帰る日がやって来る。あんなに「騙された」「帰りたい」と泣いていた子ども達が、今度は「帰りたくない」と言って泣きだすんです。空港で隠れてしまって、飛行機を止めちゃった子までいます。

今まで都会で、物理的には何も不自由なく暮らしていたはずの子ども達。なんでずっとゲームをしているか?なんでずっとスマホを触っているか?その原因の1つが、他に面白いことがないからです。

 

それともう1つ、これは大人にはシビアに聞こえてしまうけど、目の前にいる身近な大人に「なりたい」と思えないから。だから「こうしたらいいよ」って言われても、「何のためにそれをやるのか」「何故なりたいとも思わない大人像に、近づく努力をしないといけないのか」そう思っているんです。「そんなことを子ども達が?」って思うかも知れないけど、ちゃんと子どもは気づいてる。大人に合わせて我慢している。子ども時代は「我慢の時代」だって思ってる。

 

ここに来た子達は、何も強制しないのに、ある日突然、勉強をしたがったり、特技を伸ばすための努力を始めたりする。学校に行ってなかった子が「学校に行きたい」と言い出す。そんな事が頻繁に起こります。

 

生きる事を楽しんでいる大人がそばにいること、やりたい事を否定されないこと、止められないこと。自分が教えているのは自然の中で、衣食住に関する生きる力を教えることだけど、ただそれだけでも、「好きなようにできた経験」は、子ども達にとって大きな人生の変革になるんです。

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